2015年12月13日日曜日

南区の白根の町中

新潟平野自体、潟や沼なんかの低湿地が多くて、洪水なんかの川の流れの変遷により遺跡が埋もれていたりして歴史があるんだか無いんだか…って場所。
バイパス作ろうと工事始めたら飛鳥時代の遺跡にぶち当たったとかいう話を聞いた事も…

その新潟平野のほぼ中央にある、信濃川と中の口川に挟まれた土地があります。
米作や果樹栽培が盛んな旧白根市。(合併して新潟市南区の一部になっています)
新潟と長岡を結ぶ船便の中継地として栄え、染物や仏壇といった地場産業が発達しましたが、船便から鉄道、自動車へと輸送手段が移り、今は仏壇・墓石の製造販売する比較的大手の店はあるものの、染物は完全に衰退してしまっています。

今回はそこ。
話では、国内でも有数の町屋の集積地だという事ですが、特に保存されてはなくてどんどん壊されて行く運命のようです。
「町屋を残してるんじゃなくて、金が無いから直せないだけ。」
ということらしく…
専門家の話では小江戸と呼ばれる川越より町屋の数は圧倒的に多いらしいんですけど、城下町として栄えた川越と比べても仕方がありません。
なししろ観光資源がありませんし。

新潟駅からの交通手段も、電鉄は1999年に廃線になり、JRの駅は無く(仮にあっても、首都圏と違って本数が沢山あるわけでもないし、運賃が安いわけでもありません。)バス便も新潟市のBRT政策の影響で乗り換えないと…っていう状況。
自転車借りてという手もありますが、20Km以上ありますし、それなりの体力と時間の余裕が必要です。

バスは新潟駅からBRT萬代橋ラインで青山乗り換え、W70系統白根・潟東営業所行き。(新潟駅前から青山までおおよそ30分。青山から横町までざっくり40分強)

町屋を見るだけであれば魚町か横町で下車すれば十分ですが、町の歴史を観ようと言う事であれ
ば、横町の3つ先、中の口川を越えた緑ヶ丘病院前で下車。
戻って橋を渡ってから左、給水塔を目指します。
(緑ヶ丘病院前から、渡ってきた橋(新富月橋)へ戻ると反対岸の左手方面にこんな塔が見えます。この写真は塔の下から撮ったものですが…)
例年6月の上旬に行われる大凧合戦は、この町で行われる一大イベント。
大昔、テレビの企画でマジで大凧で人を空へ揚げたり、トラック野郎のロケで使われたりなんて過去もあります。
(劇中、菅原文太さんと愛川欣也さんが大凧につかまって空中に上がるシーンがありますが、アレは見た通りの合成映像)

そのあたりの資料は、しろね大凧と歴史の館という所にありますが、それ以外は観光に来る人はほとんどいない。なにしろ、これという売りが無いですからね。

しろね大凧と歴史の館:http://www.shiteikanrisha.jp/ootako/
白根大凧合戦動画:https://www.youtube.com/watch?v=2PdmXK_Df_c

普段のこの町の見どころは、本当に古い建物を眺めるくらいでしょうか。
昔はそれなりの栄えた町ですから、少し古い町に興味のある人は退屈しないのかもしれません。
右の写真は、白根庭園から見た給水塔。
かつて上水道をこの塔から送っていたということ。
中の口川の堤防の上にありますが、堤防の下には水道公園という場所があって、そこに浄水場があったようです。
庭園自体は和式の作りで、広くはないですね。

そこから町の方へ歩いて行くと旅館が2軒。
うち1軒は営業を行ってないように見えます。
その向かいにあるのは、この地域の総鎮守となる白根神社。
なぞるように通りは右に下っていきますが、真っすぐ行けば大凧合戦会場となる堤防へ出ます。

朝倉旅館。
屋根の瓦を見ると「アサ」と文字が入っています。
もう営業はしていないような感じがしますが。









見晴らしや旅館。
屋根の瓦に「見」の文字が入っています。
見晴らしや旅館の1軒隣に、「六太郎」という食堂があります。
かつては、この近所に反対岸へ渡る橋がありましたが、随分前に給水塔の先へ移転。
今も人と自転車が渡れる橋はありますが、それでは通行量に大きな違いがあります。
しかし地元の人に支持されているようで、先日ちょっと離れた所に住んでいる人から「夏場は、あそこの冷やし中華は絶品だよね」という話を聞いて、ちょっとびっくり。
店内には昔の写真が貼ってあったりします。
お店自体は改装して新しくなってますけどね。

さて、道に沿って坂を下り、信号を左折するとかつてのメイン通りです。
今はシャッター(まで行く前に寂れたので雨戸なのか…)商店街。
建物は昔のままの町屋の所があり、壊して住宅になっている所もあり、壊したまま空き地や駐車場になっている所あり。

左のような、既に存在を知らない商品の看板があったり、一本奥の道へ入ると廃屋があったりもします。
よく見ると、昔のアイドルでテレビ出演しているタレントさんが現役のアイドル時代の商品ポスターとかも見つかるかもです。

小学校時代の恩師がフィールドワークでこの町の旧家の古文書を調べていたけど、どうなったんだろうな、なんて思いながらぶらぶらと。

結構火事で焼けてたりするらしく、残っているのは戦前の建物なのかな。
背の高い建物が無いから堤防から見る景色は空が広い。
そして、なにしろ人が少ないってのが印象的。
かつては栄えてたんだろなってのは、割烹、料亭系の建物がポツポツ残っている事からわかります。
営業している所も多いけど、なかなか改装に手が回っていない。それがまた趣があるかもしれないですね。
旅館は閉めている所が多いけど、この手の所を使って町おこし出来ないかななんて思ったり…

白根橋の交差点まで戻って来ると、とりあえずこの町屋で一番目立つ角の酒屋(庭幸酒店)さんの建物。
そこから先が一番町屋の連なりがよく見えるポイント。(最初の写真)
五六の町・魚町…
これまでの通りより更に人通りは少なくなります。あっち側は銀行があったけど、こちらには無いし。

そんな通りを歩いていると、時間に取り残された気分になります。
建物は連なっているけど、あまり人影が無い。自動車も通るけど、連なって来るという感じではない。そして、高い建物が無くて、見上げると広い空が見える…
なんだか異世界に来たような感じがします。

そんな気分にさせられるのは、通りではちょっと異色な洋風の作り(でも、木造なんですが)の筒井歯科(現在は閉院しているようです)
モダンという言葉が似合っていたであろう建物も、長年の風雪にさらされてペンキがはげかけていたり…

庭幸酒店さんの前を真っすぐ行かずに右に折れると北越銀行白根支店。
旧白根市役所の建物です。
市役所が移転してどれくらい経つのか知らないけど、銀行は流石に建物のメンテナンスはちゃんとしています。

寂れた町でも、なぜか銀行の支店は幾つもあります。
新潟というのは地銀が強い土地柄で、メガバンクの支店なんて中央区の古町まで行かないとありませんが。
この一帯には、単独で存続している銀行としては日本最古になる第四銀行の他、写真の北越銀行、その向かいに協栄信用組合、少し先に大光銀行、ゆうちょ銀行が集まっています。

中小企業、個人商店と農家がメイン顧客なんだろうけど、一応、ホームセンター大手のコメリや、ファンヒーターなんかをつくっているダイニチ工業の本社、亀田製菓、ブルボンの工場があるってこともあるのか。
まあ、みんな郊外ですけど。

いままで通ってきた一本裏の通りにも古い建物が沢山。
表通りから裏通りへの路地とかも雰囲気あります。この路地は、筒井歯科さんの、だいたい向かい側にある氷屋さんあたりの脇。

人の生活している路地ですから、住民の方々に失礼にならないよう。

人の住んでいる建物、住んでいない建物…ずっと見ていると、朽ちて行くという言葉が浮かんでしまって、何とも言えない気持ちになりました。

昔の景観を残して売り物にしている観光地は建物の営繕がちゃんとされていて、安心した懐かしさがありますが、この町には時とともに朽ちていく様子そのままが残されていてせつないというか、飾り気が無いというか。


右の写真の家は、水道公園の脇の坂を下った所にある廃屋ですが、中には鍋やお玉なんて台所用品がそのままかかっています。
住んでいた人はどうしたんだろうって…
いろいろ考えさせられます。


旧国道8号線を渡り、国道460号線との間にある保育園。
さすがに、この入口は使われていないようですが…
「白根   中央保育園」の間には、多分「市立」って文字があったんだと思います。今は新潟市南区ですから。
「国民年金融資」ってのは、あんまり見かけないですね。
昔は国民年金基金から、事業主が融資が受けられたのですけど、2000年の年金改革で行えなくなりました。
あちこちに建てて赤字運営を行っていた保養施設(グリーンピア事業)のせいで随分叩かれた制度ですが、悪い所ばかりではなかったんですね。  

ここは、かつてはめずらしいものではなかったけど、今では、あまり見かけない。
アラフォー以上の人たちにとってはそういう場所じゃないかなと思います。

残そうとする建物はあるでしょうが、全体的に保全しようという事はないようなので、時間とともに確実に無くなっていく場所です。
昔いた会社で、世界の廃墟ってシリーズをって企画を持って南米に取材に行ってきたら、中の一つが世界遺産になっちゃった…という良いのか悪いのかって事がありましたけど、ここはそういう事もなさそう。
ここには長い時間をかけて消えていく風景があります。

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